【狩猟のリアルVol.3】
私はくくり罠猟9年目の現役猟師。
2025年の猟期終了間近の3/13
朝の罠の見回りで、熊とまさかの遭遇!
しかも至近距離で!
・・・と思ったら、自分の仕掛けた罠に
ナント熊が掛かってたんですッ!
私の罠は法令バリバリ遵守の罠!
しかも文句の付けようのない
直径12cmの円形【神の板】!
なんで熊が掛かるわけ??
今回はくくり罠に熊が掛かって、
私がどう対応したか?
当時の状況から
その後の対応方法迄
詳細に書いていこうと思います。
皆さんも同じ状況に陥ったら
ぜひ参考にして下さい。
朝の罠の見回り、すると熊がいたッ!
くくり罠猟は基本的に毎日罠の見回りします。
私は大抵、朝ごはん食べてから8時頃出かけます。
この日もそれくらいの時間に歩いて出かけました。
その日は猟期終盤、2025年3月13日木曜日。
車を森の空き地に停め、現地に置いている、
間伐材で作った、長年愛用の杖を持ち、
山道を少し歩きました。
それから右にそれてケモノ道へ入り、
罠を仕掛けた方へ向かいました。
途中、細くて浅い渓流をジャブジャブ入り
数歩歩いて、対岸に足を掛けて上がって
ふと前を見ると何か動くものが目に入りました。
私は50代で目もお年頃で白内障。
遠くがハッキリと見えなくなっています。
獲物が何か確認する為、少し近づきました・・・。
すると、その動物は黒いんです。
ナニあれ!?
最初の印象はそんな感じ。
だって鹿ならフツー茶色。
イノシシならグレーっぽい茶色です。
黒って何よ??
タヌキ?
でもデカいぞ!
そう思ってさらに近寄って
黒い物体との距離は10メートルほど・・・。
黒い胴体で正座してる?
胸元はなんか白い横線!?
コレってツキノワグマじゃん!!
大きくはないです。
でも子熊ではない。
なんでこんなところに熊が?
でもあの場所は私の罠のあるすぐそば。
熊をよく見ると前足あたりを
なんかポリポリしているし・・・。
その時ようやく、愚鈍な私の脳みそでも
くくり罠に熊が掛かった事が判りました。
ワイヤーが取れなくて困ってるんだ!
いわゆる、これは【錯誤捕獲】ですね。
狙ったのと違う動物が何らかの原因で
掛かっちゃったってやつです。
写真撮影♪ ちょっと待て!と心の声が
私はいつも獲物が掛かっていると
スマホかカメラで写真撮影します。
それはくくり罠猟師にとって
一番うれしい瞬間だからです。
いつもの習慣で、
「おッ!獲れた♪ 写真撮ろうっと♪」
と考えましたが、
すぐに心の声が聞こえます。
「ちょっと待て! アホたれ!
野生の熊だ! 今すぐ逃げろッ!」
その声で、私は我に返りました。
相手は熊です。
おとなしいメス鹿とは訳が違います。
すぐに踵を返し、渓流を超え、
歩いて家に戻りました。
まだ、見回らないといけない罠も
ありましたが、そんなことブッ飛んで
スカッと忘れてました・・・。
家に帰りながら、イロイロ考えました。
「熊が掛かっちまった。この後どうするよ!?」
熊が掛かっちまった、どうしよう!?
家に無事着いたはいいものの
一息ついてからイロイロ考えました。
以下が私の考え。
動揺したのか?
思考があっちこっちに迷走しています。
●メッチャ大きくないから蝶ネジストッパー
緩めて逃がそうか?
≫ いやいや、下手すりゃ熊に殺されるって!!
●狩猟仲間の先輩に相談しよう!
≫ 何度電話するもつながらず・・・。
●猟銃持ってる先輩に打ってもらって肉食うか?
熊肉って食べたことないし、旨いらしいし♪
≫ 県では熊を保護して、放獣するらしい・・・。
●県に報告して、対処方法相談しようか?
≫ 罠の事イロイロとやかく言われる?
≫ 違法の罠は何も使ってないから大丈夫!
イロイロな考えが頭に駆け回ります。
結局、私はどうすることにしたのか?
あーでもない!
こーでもないと
イロイロ考えて、結局、
無難に県に報告し相談する
ことにしました。
やっぱり基本はホウレンソウだよね。
(報告、連絡、相談からくるビジネス造語)
県の管轄部門に熊が掛かったことを正直に報告
私の住む県の狩猟管轄部門に電話しました。
私:「こんにちは!」
県職員:「ハイ!こんにちは! ●●事務所の○○です。」
私:「あの~、今日の朝、罠の見回りに行ったら熊が
掛かってたんですけど、どうしたらいいですか?」
県職員:「えッ!熊ですか? えっと~担当者に変わります。」
このようなやり取りで始まり、
担当者と詳細な状況説明や今後の対応を話しました。
結果としてこのようになりました。
●熊の大きさ説明
●熊がどのように捕獲されたのか?
●熊はいつ捕獲されたのか?
●グーグルマップを見ながら現地位置を説明
●車を数台おける場所があるか?
●近隣住宅からどれくらい離れているか?
●私が現地に行って捕獲場所案内可能か?
●現地集合場所と時間を確認
●猟銃を持っているか?
●銃を持っている猟仲間はいないか?
等、詳細に報告を求められ、
全てひとつづつ素直に答えていきました。
そして、結果として
12時に現地集合となりました。
私は猟友会のオレンジ帽子と
オレンジのウインドブレーカーを着て
待っていると伝えました。

熊一頭に総勢13名が集結!
現地は私の家から、1キロ足らず・・・。
(dondake inakani sunderuno? )
車はヨメサンが使っていてない。
私は歩いて現地に行った。
12時過ぎ、車が2台。
一台には県職員が3人
もう一台はナント仮面パトカー。
中から私服警官が2名出てきました。
話をして判りましたが
近隣の警察署の警察官でした。
熊の場所から距離にして70m程しか離れていない
近くの住宅街に銃弾が飛ばないようにとの
配慮の様でした。
そして、軽自動車のパトカーも到着。
近所の駐在所のおまわりさんでした。
しばらくすると、軽トラも到着。2名追加。
放獣の為のドラム缶型檻を積んでました。

またしばらくして軽自動車が2台追加。
猟友会の猟師(一人は知り合い)2名追加。
熊はまだいるのか?
念の為、熊がまだいるか?
猟銃を持った猟友会の二人と
熊の存在を確認しに行きました。
罠を仕掛けた場所迄あと15mほど。
アレ?いない??
でもよく見ると、大きな木の分かれ目、
Y字になった木と木の幹の間から、
艶のある黒い毛皮が少し見えます。
生きているかどうか、私の愛用の杖で
そこらの立ち木を叩いて音を出すと
熊が少し動きます。
猟友会の猟師から、「熊を刺激しない方がいい」
と言われて、やめました。
猟友会猟師も目視で熊を確認。
確かに熊はまだいます。
確認後、また車の場所に戻りました。
すると県の職員さんが何やらずっと電話してます。
聞いていると、ナント神戸から熊を麻酔銃で
眠らせて捕獲する野生動物保護管理事務所の人が
来ると言う。
でも高速で渋滞にハマり、到着が遅れるとのこと。
2時間ほど遅れて14時頃やっと到着。
若いお兄さんと、キレイなお姉さんでした♪
このかわいらしいお姉さんが
野生の熊と対峙すんの??
マジですか??
でも持参した装備を見ると日頃から熊の
対応は慣れてそう。
これなら大丈夫だろう。
と言うことで、現地に集合したのは
県職員 3名
私服警察 2名
地元おまわりさん 1名
ドラム檻組 2名
猟友会 2名
神戸の麻酔銃組 2名
道案内の私 1名
——————————
合計 13名
クマ1頭に13名のニンゲンが集結!
えらい大ごとになりました・・・。
くくり罠猟初心者の皆さん、
熊が掛かると、ニンゲン13名で対応になるかも!
熊が掛からないようにご注意下さい!
熊はその後どうなったのか?
神戸の【野生動物保護管理事務所】の二人は
私に熊の居場所を案内するように依頼しました。
熊は車を停めた場所からすぐそば。
距離にして、50mも離れていません。
神戸組の2人は装備を整え、
私と森に入りました。
すぐそばですけど。
ガードレールを跨ぎ、
森に入り、大きな倒木がある所で
歩みを止めました。
そこで先ほどのように、
熊の存在を確認。
神戸組も目視で確認。
神戸組の女性が、
「熊は確認出来ました。あとは我々が対応します。
車の中で待機してて下さい。」
そう言われて、
私はすぐ戻り、知り合いの猟師の車で
待機させてもらいました。
山の方を見ていると
しばらくして神戸の二人が戻ってきて
山際に立っています。
2人はずっと熊のいる方向を見てます。
恐らく麻酔を吹き矢などで打ち込んだのでしょう。
熊が眠るのを待っているようです。
そうしてしばらくすると、二人は山に入り
それから男性の方が熊を抱えて出てきました。
熊は思ったほど大きくありません。
恐怖心から大きく見えたのでしょう。
あとで聞くと、体重22キロだそうです。
運び出された熊は寝かされ、
足と腕を太いロープで縛られ、
口には木の棒をガッツリ噛まされてます。

麻酔で既に眠っているので
お兄さんの膝枕で、ZZZ・・・

顔も、周りが見えないように
目隠しをされていますね。
それにしても牙がスゴイ!
違う角度から。

犬の犬歯どころじゃない!
熊の犬歯は太くて長いッ!
コレで噛まれたらタダではすまない。
別角度から。

お兄さんの指と比較しても
かなり太い牙!
この熊を呑気に写真撮ろうとしたり
蝶ネジ緩めて逃がそうと考えた
自分の浅はかさを深く反省・・・。
こんなのに噛まれたら、
ヘタしたら死ぬ・・・。
ちなみに爪もスゴイ!

太くて長い。
くくり罠猟をしてると
爪跡の残る木の幹は結構目にする。
なるほど、
こんなので木の幹をガリッとやると
あんな傷が幹に残るのね。
今度は熊爪をアップで。

こんなんで顔をガリッとやられたら
カンタンに失明するね・・・。
この熊、この後ドラム缶型捕獲機に入れられました
捕獲機はこんな感じ。

ドラム缶を二つ連結し、
両方に穴の開いた鉄板を付けています。
ドラムのサイドには持ち手が4つづつ。
中はこんな感じ。

前と後ろはメッシュタイプで中を観察できます。
本体上部と下部にも穴があり
吐瀉物やし尿なども排出出来ます。
入り口はこんな感じです。

上部のメッシュの金属板は下に下ろせて
ロックできる構造で、入ると逃走は不可。
安全に運搬できます。
この熊捕獲機に入れられた熊はコチラ

まだ、麻酔でおねんね中の熊。
アップで。

こうやって熊捕獲機に入れられました。
その後、口の木の棒を外され
今度は覚醒する薬を注射されました。
私が見たのはこの後入口を閉められ
軽トラに捕獲機が積まれるとこまで。
その後、軽トラでどこかの山へ移送され
放獣されるとのこと。
良かった、ヨカッタ。
でもどうして熊が掛かったの?
今回の一連の騒動で
私は疑問がふたつあった。
なんで手の大きな熊が
たかだか直径12センチの罠にかかるわけ???
コレが実際に私が使っていた罠。
法令に添った、オーソドックスな罠だ。

この謎は、神戸組のお姉さんに尋ねてわかった。
熊は前足に掛かっていたけど、
手首でなく、ツメ3本で掛かっていたそうだ。
なるほど、手が大きな熊でも、
爪先ならくくり罠に掛かるよね。
エサもフツーの米ぬかだったんだけど。
まあ、塩をブレンドはしたけどね。
そしてもう一つの謎、
それは、
なぜこの場所に熊が来たのか?
この辺りで熊の爪跡は時々見るけど、
みな古いものばかり。
最近の爪跡ではない。
熊の足跡とかも見た事ない。
もちろん熊のウ●コも見たことない。
ではなぜこの場所に熊が来たのか?
胸に手を当てて考えるに・・・
ひとつ心当たりがある。
それは、
それは、
この場所で今期鹿を2頭獲った。
10mと離れていない。
しかも3/1と3/9とかなり短期間に2頭。

それだけでなく、
この場所で解体し
2頭とも同じ場所に埋設した。
毎日見回りに来ていたが、
全て1~2日で残滓は野生動物に
キレイさっぱり持ち去られていた。
もしかしたらこの熊だったのかも!
ここに来たら、美味しい鹿肉が喰える。
この熊は、
今日は鹿肉あるかな♪
とちょくちょく来ていたのかも!
そうしたら、米ぬかがあちこちに
置いてある。
仕方なく、鹿肉代わりにそれをパクついてたら
ガッチャン!となったのでは?
コレが私の推察。
恐らく間違っていないと思う。
深く反省・・・orz
今後は山に残滓を埋設する際は
罠から遠く離れた場所に
分散して埋設しよう!
そうしないと熊を誘引してしまう。
そんなことを学んだ今回の事件でした。
皆さん、私を反面教師として学んでください。
本日の授業はここまで!
本日の授業内容をまとめます。
本日のまとめ
熊と遭遇!くくり罠に掛かってる?錯誤捕獲だ!どうしよう?【体験記】
●熊が掛かったら、決して近寄らない。
速やかに退避する事! 【超重要】
●熊が掛かったら、在住の都道府県の狩猟担当部署に
連絡し、対応を相談する。
●シカやイノシシの残滓を稼働中の罠近くに
埋設すると 熊を誘引してしまう可能性あり。
●残滓は出来るだけ稼働中の罠から遠くに埋める。
●熊が掛かると、各関連部門の人が集合し
大ごとになるかも。
くくり罠猟師の皆さん!
法令を遵守し、安全な狩猟を心掛けましょう!
狩猟のリアルな現実 を紹介する、
【狩猟環境・情報コース】
狩りをしていて遭遇したハプニングや困った事、
貴重な体験と気付き等を全てお話しします。

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